霧のむこうのふしぎな町
2004年に第一刷が刊行されたこの本(柏葉幸子/作 講談社 青い鳥文庫)は、「わたる文庫」を教室内に設けるにあたって買った本の一つです。この時点で私はまだこの本を読んでいませんでした。
でも、「この本は絶対面白いな!」というのは、もう本屋さんで見つけた時には分かっていました(笑)。
正確に言うと、「私が」絶対面白いと思う本、ということなのですが、そういう直感には割と自信がありまして、大抵当たります。勿論外れることもありますが…。
子どもさんにもあると思うのですよ。一緒に本屋に行って、何の内容かも分からずに、この絵本が欲しい!この本が欲しい!というおねだりが。
表紙の絵が自分好みとか、タイトルにパンチが効いているとかで瞬時に惹かれるというパターンから、「何だか分からないけれど、気になる」というものまで。いろいろあるとは思うのですが、よほど「こ、これはダメでしょ!!」と大人が感じるもの以外は、そういう感覚は大事にしてあげて欲しいなぁ~と、勝手ながら思います。前回のブログにも書いたのですが、私の親は、ゲームは絶対買ってくれなかったのですが、本屋で私が「これを読みたい」と、中身も知らずに手に取った児童文学は大抵買ってくれました。それがいつしか児童文学ではなくなり、推理小説やシドニィ・シェルダン、スティーブン・キングといった海外の有名作家の文庫本になってからも、そこに多少性的表現が関わる内容が入っていても、それは変わりませんでした(まぁその頃にはもう中高生になっていたというのもあるでしょうが)。
話が逸れましたが、「霧のむこうのふしぎな町」。読んでみると……やっぱり大好き!むしろ、大好きすぎる!!というお話でした。大人が読んでも絶対に楽しいです。素敵なお話です。ファンタジーの世界が大好きなお子さんも、そうでないお子さんも楽しめると思います。
主人公の女の子リナは、小6の夏休み、お父さんから「たまには違う所へ行ったらどうか」と、長野のおばあちゃんの家ではなく、「霧のむこうの町」でひと月を過ごすよう勧められます。
そこでリナは、最初こそ何にもできないような雰囲気を漂わせて、意地悪なおばあさんからイヤミを言われては涙ぐむのですが、「働かざる者、食うべからず」、「ここでは、タダ飯は食わさない。ここにいたきゃ、働きな!」と、下宿先のその意地悪おばあさんから命令されるままに、次々といろいろな所でアルバイトをします。
おばあさんはイヤミだし、アルバイトも大変なところはあるのだけれど、リナは親切な下宿人や町の人たちとどんどん仲良くなっていって、とても強くなっていきます。リナの成長ぶりが見ていて微笑ましいし、同年代の子は、リナのような子と友だちになりたいと思いながら、時にハラハラしたり応援したりしながら、この本を読むでしょう。
そして何より、「こんな素敵な町に自分も行きたい」と旅への憧れに想いを馳せるかもしれません。
登場人物は人も動物も、その他の人種(?)も、みんな変わっているけれど善人です。これもまたこの本を楽しめる要因になっています。
この本を読んだ時、学生の頃、本屋や学校の図書室、町の図書館などへ行って現実逃避し、本の世界へ埋没していった頃のちょっと根暗な、しかし確実にそれを楽しんでいた昔の自分を思い出しました(笑)。やっぱりファンタジー小説は良い!大人になってからでもいいのですけど、子どもさんに、子どもの頃のうちに、たくさんのファンタジーを読んでもらいたいと思います。
壮大な冒険ファンタジーも良いですが、普段あまり本を読まない、という日本の小学生さんには、このリナの小さな夏物語はファンタジー入門書としても、とても良いのではないかな?と感じました。
「わたる」はあくまでも学習塾ですが、素敵なお勧め本もたくさん置いていて、会員さんに貸し出しています。興味のある方は、一度見学にいらしてください。