小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

SNOOPYのもっと気楽に ①なるようになるさ

久しぶりに本の紹介です。本と言いますか、おなじみスヌーピー(チャールズM.シュルツ)の、3~4コマ漫画です。「わたる」にも置いています。


スヌーピーと言えば子どもの頃はアニメもやっていて、時々見ていた記憶があります。大笑いする…というのとは違うのですが、何故だか引きつけられて楽しくて、よく見ていたものでした。


登場人物はとてもユニークな子どもたち(+スヌーピー&ウッドストック)。
この本の冒頭にあります、河合隼雄先生の解説を読んで初めて気づいたのですが、この物語には大人が一人も出てこない!
それでも、話中には大人ぷった子どもたちが、時に精神分析医となったり、突然哲学を始めたり、知的なことをすらっと話し出したりして、大人も「ウッ」となること請け合い。子どもさんが読んだら、大多数は「?」となるかもしれませんが、どこかでそのフレーズをふっと真似したくなる、そんな魅力が、登場キャラクターの会話には沢山あります。


冒頭、河合先生は解説で、この物語のテーマ「気にしない、無理しない、思うようにいかなくても、好きにすれば!?きっとうまくいく」=「なるようになるさ」に反して、「いかに人間―特に大人―は、何かを気にしたり、無理をしたり、思うようにいかないと泣いたり怒ったり、好きなようになかなかできず、どうも失敗しそうだと思って生きていることがわかる」と書いています。


しかし河合先生はそんな不自由な大人をディスっているわけではなく(笑)、こうも書かれています。


「人間の大人はなんと馬鹿なのだろうと思うが、ここにあげた生き方は、少し言いかえると、周囲に配慮し、努力を続け、自分の失敗を反省し、他を喜ばせ、常に誤りがないかと気を配って生きている」


だからこそ、そのような生き方を大切にするあまり、つい子ども達にも過剰な「道徳教育」を求めてしまうのだけれど……、子どもの知恵を侮ってはいけない、それはこの本を読むととてもよく感じられる…そんな趣旨のことを書かれています。
大人の価値観もとても大切で重んじられるものだけれども、子どもの知的な世界も覗いてみると、新たな世界が拓けるのではないか、と。つまり、どちらかというと、大人に読むことを勧めているのでしょう。


実際、登場キャラクターである子ども達は、時に陰鬱だったり、勉強がまるでできない「落ちこぼれ」であったり、意地悪だったり、一見すると「この子って…」と道徳観を重視する大人からは白い目で見られそうな描写が成されています。
それでも読んでいて何とも「クスッ」となれるのは、きっとこのテーマにある「なるようになるさ」の精神で子どもたちがたくましく生きているのが実によく分かるからです。「スヌーピー」に出てくる子ども達は、そう、みんなたくましい!
さらに、それは主人公であるスヌーピーもです(笑)。のんびりと犬小屋で横たわっているスヌーピー、しかし「犬であるってことは、フルタイムの仕事」と嘯く。なるほど確かに「犬も大変だな」と思わせるような葛藤だったり、苦労だったりを見せてくる…、だけれども、それでも彼は読者を笑わせてくれる。ユーモアを魅せてくれる。そういう姿が愛おしいと思えます。


お気に入りのストーリーがありすぎて、どれを紹介するかは悩みどころですが、幾つか。


妹のサリーが、ベッドで丸くなる兄のチャーリー・ブラウンに「言いたくないけど、学校の時間よ…」と起こしにきたことに、チャーリーは「言いたくないのになぜ言うんだい?」と訊ねます。
すると彼女はその場を去りながら「ほんとは言ってやりたいから」と答える。
……う、うまいっ。皮肉がきいているし、「サ、サリー、あんた…!」と思う一方で、「分かる!結局そういうことよね(笑)」となります。


また、常に安心毛布を手放せないライナスは、姉のルーシーに「姉さんは、どうしていつもぼくを批判したがるんだい?」と訊ねます。
それに対してルーシーは、「私は他人の欠点を見るコツを知っているんだと思うわ…」と回答(ひどっ)。
それにライナスはすかさず、「自分自身はどうなのさ!」とつっこむのですが、ルーシーはさらりと、「それを見過ごすコツを知っているの…」と答えるのでした。


勉強が苦手で、授業中は居眠りばかりだけれど、独創的なペパーミント・パティは、親友のマーシーを訪ねて、「ヘイ!マーシー!すばらしい夏の日よ!出てらっしゃいよ、何もしないで一日を無駄にするのよ…それからそれを思い出して、一生後悔するの!」と誘います。
そうして普段本の虫であるマーシーは、パティと一緒に木陰で横になりながら、「いい考えでしたね、先生…」と微笑む。


どれもこれも素敵な青春の1コマという感じです(笑)。是非手に取って読んで頂きたい一冊。特に、いつも多忙で、或いは鬱々としていて「何だかモヤモヤする~!」なんてことがある方は、好きな飲み物片手に、リラックスしながらこれを読むと楽しい気持ちになれるかもです。


尚、会話の吹き出しは日本語になっていますが(谷川俊太郎さんの訳)、横に原語(英語)が書かれているので、中高生の英語の勉強にもなるかなぁと思います。


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