小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

ぼく にげちゃうよ

ほるぷ出版「ぼくにげちゃうよ」(マーガレット・W・ブラウン文/クレメント・ハード絵/いわたみみ訳)も、前回こちらで紹介した「だんびり」同様、大好きだったけれど、いつの間にか忘れてしまっていた絵本のひとつです。


それがこの間、友人が娘さんのために読み聞かせたと話してくれたことで「わー!」と記憶が蘇り、自分も勢い込んで新装版を買ったのでした。第95刷発行ですって。やはり相当なロングランですね(初版は1976年)。


お話の筋はタイトル通り、不意に「どこかへいってみたくなった」た子うさぎが、母うさぎに「ぼくにげちゃうよ」と家出宣言(?)するところから始まります。


もし我が子に突然そのようなことを言われたら、世のお母さん方はどのような反応を取られるのでしょうか。勿論十人十色とは思いますが、中には、「どーぞどーぞ、どこへでも行っておいで(笑顔)」「自由満喫じゃーばんざーい!!」…となるお母様方も少なくないと思うのですが、どうでしょう。
ただ、この絵本に登場する母さんうさぎの場合は、お前がどこへ行こうとも、母さんは後を追いかけます!だってお前は私の可愛い坊やだから!!…というタイプなのです。


で、そこから子ウサギと母ウサギの追いかけっこ妄想が始まるのですけど、この「子ウサギ探し」が何とも楽しい。
子どもの頃に子ウサギを楽しく探していたことを不思議なほど覚えています。この絵本、白黒ページとカラーページが交互に展開するのですが、そのせいで(?)何とも不思議な感覚に陥るというか、想像の世界・夢の世界がより濃く感じられるんですね。さっきまで白黒ページだったのに、庭先に隠れる子うさぎと、庭師となってやってくるお母さんうさぎのカラーページがとても色鮮やかで綺麗で。そういうファンタスティックな演出に惹かれます。


そしてこのお母さんうさぎの無双感とでも言いますか…子どもがどこへ行こうが「必ず探し当てるぜ!」ってな力強さが随所で感じられ、頼もしい。


また、この絵本に特別惹かれた個人的理由としては、子どもの頃から鍵っ子で母親が家にいなかったものですから、こういう、「いつもお母さんが傍にいる」というシチュエーションに羨ましさみたいなものを感じた、というのもあるかもしれません。


内容的には、いかにも就学児前のお子さんが親御さんと一緒に読むような内容の作品なのですけど、小学生さんが読んでも勿論良いですし、それこそご家族で読んで、この内容に何やかんやと意見を言い合っても楽しいのじゃないかな~と思います。
それこそ、「家出するならまずどこへ行く?」みたいな具体的な話もできますしね。
自立を考える子ウサギに、ブレーキをかけようとする母うさぎ(笑)。
一読の価値ありですので、是非とも手に取っていただきたい一冊です。


因みに塾長ごんの初家出は3才の時ですね。(確か)「いえでぼうや」という絵本に触発され、「私も家出する!」と、三輪車のカゴにティッシュでくるんだ生卵とヤクルトを入れ、キコキコと三輪車を漕いで家の周りを一周した後、「ただいま~」と帰還しました。(それ家出か?)


そんな余談は良いとしまして。
ただ……この絵本、唯一の不満というか、「ガーン」となった点が一つだけあります。
それは、この新装版のカバーに、お話の全容(ネタバレ)がサラッと書かれていることです…。入手して開いたとき真っ先に目に入って、思わず全文読んだ後、ウオオォイッ!!と、心の中で激しいツッコミが入りました…。言うなよ…言ってはいかんでしょうよ…。何故言う…?最後のオチまでも。
このカバーは取るべきか否か…悩むところです(笑)。


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