ちいさいおうち
岩波書店から刊行されている、バージニア・リー・バートン文/絵(石井桃子訳)の「ちいさいおうち」は、1965年に第一刷が発行されました。今から50年以上も前に誕生した絵本ですが、今なお多くの人に読み継がれている名著です。
小さな学習塾「わたる」にある「わたる文庫」には、塾長が子どもの頃に読んで感銘を受けた、或いは深く記憶に刻み込まれて忘れられないでいる作品を中心に本棚に並べていますが、この「ちいさいおうち」もその1つです。家にあったものはもうボロボロで、さすがに新しく買い換えましたが、やはりページを開くと、昔感じた懐かしい感慨が「ぶわあ~」っと一気に蘇ります。
とにかく絵が秀逸。
計算し尽くされた構図も唸るほかありません。
あとがきにも記されているのですが、この主人公の「ちいさいおうち」は、1ページ目からちっとも動いていません。え?「家」なんだから、そりゃあ動かないでしょ?…と、思われるかもしれませんが、しかし全編通して、これは実に「動きのある」絵本なのです。とにかく変わる。それはめまぐるしく。そして、微動だにしていない「ちいさいおうち」をそのページごとに眺めていくと…。
あっ!ということに気がつくのです。
物も生きているんだなぁ、こんな気持ちなのかも…子ども達がそういう風に想像を巡らせてくれたら嬉しいですし、特別なことは感じなくとも、この主人公である「ちいさいおうち」のある意味「大冒険」を楽しんでもらえたら、それだけで本当に意義のあることではないかな、と思います。
それに何より、この「ちいさいおうち」が本当に愛らしいのですよ。グッズ展開されないのかしら…。フィギュアとかジグソーパズルとかあったら欲しい。もしかしたらされたこともあるかもしれませんね、何せこんなに可愛いのだから。
…というほどの可愛さは、やはり物語を追っていってこそ感じるものなので、とにかくぜひ読んで下さいとしか言いようがありません(何か1つ語っただけでもネタバレになりそうで書けないのがもどかしいところ・笑)。
そして、いや~、人間ってつくづく業が深いなって思います(何)。
子どもの頃にはそんなに深くは思わなかったですが、排気ガスだらけはいやだなぁとか、やっぱり自分は山の中で暮らす方が好きだなとかは、この絵本を読んで思いました。
都会をディスっているわけではないのですが(単に事実を描いているだけなので)、田舎の自然って素敵だなというメッセージは色濃いですね。
「わたる」ではめっきり人気ない絵本ですが、誰か借りてくれないかな~といつもドキドキしながら見守っています。この本を開けば、何らかの新たな発見が絶対にあるはずだから。