カカ・ムラド ―ナカムラのおじさん
久しぶりに絵本(絵本が2作入った本)の紹介です。
『カカ・ムラド―ナカムラのおじさん』(ガフワラ著/さだまさし訳・文/双葉社)は、2020年に発行された、「アフガニスタン人と日本人による合作」です(「おわりに」の文を書いている上原氏による紹介文より抜粋)。
この本には、アフガニスタンの方が書いた絵本が2作と、中村哲先生の現地での活動やお人柄について記載された「解説」とが収録されています。
「ガフワラ」とは、ダリ語で「ゆりかご」を意味するそうです。アフガニスタンで暮らす子ども達に良質な絵本を制作したり、海外の絵本を翻訳して、各地の小学校等に贈ったりする活動をしているNGOの名称で、2016年に日本で生まれたそうです。
こちらの団体が、2019年にアフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師の活動を広く様々な人々に届けようと、「カカ・ムラド~ナカムラのおじさん」(サビ・マハディ著/ゴラム・レザ・ハビビ絵)と、「カカ・ムラドと魔法の小箱」(ハズラット・ワハリーズ著/ルスタム・ラマサン絵)を掲載したこの本を発行しました。
さらに書くと、この絵本の制作費用は、洋服を中心とした通販会社「フェリシモ」の「LOVE & PEACE PROJECT」を通じて、商品を買った方からの寄付金から負担されているそうです。中村先生への感謝の念、また平和な世の中を願う様々な人々の様々な想いが詰まった作品、ということになります。
中村哲医師の医療活動を超えた人道的支援は、この2つの絵本を読むとよく分かります。
子ども達だけでなく、大人にもその偉大さがストレートに伝わりますし、「先生のように生きたい」という尊敬の気持ちも自然と湧いてきます。
「カカ・ムラド」も「魔法の小箱」も、作者さんは淡々と事実を描いているだけと言えばそうなのですが、その事実がそのまま、まるで魔法のようと言うか、「聖者」という人間がもしもこの世にいるのなら、このような方なのでは?と感じさせます。「魔法の小箱」はファンタジー風味のお話ですが(川や木が喋ったりするので)、中村先生の言動は普段の活動の様子をそのまま描かれていて、こんな先生が近くにいたらいいなぁ、子ども達への話し方とか接し方が優しさに満ちていて、本当に素敵だなぁと感動します。
枯れた砂漠に水を通す…なんて、本当に言葉では言い表せない大事業。ましてや紛争の絶えない地域で。でも、病気の原因を探った時に、ただ薬を提供するだけでは問題の解決にならないのだという結論から、医師の活動を超えた行動を「人々に働きかけて」「率先して自らが現場に立って」続けられた…。
中村先生の偉業は、この絵本を読む子ども達だけでなく、世界中の人々(特に同じ日本人)に知って欲しいです。
それこそ、教科書に載せて欲しい…!(すでに載っていたらごめんなさい・焦。いやもう当然、載っていないとおかしいから載っている!?)
国民栄誉賞ってこのような先生にこそ与えられるものでは?とも思います(先生は要らないと言うかもですが)。
みんなが中村先生を知り、中村先生の行動を知り、自然と尊敬の念を抱けるようになったなら、世の中の争いも少しはなくなるのじゃないか、少なくとも戦争が止まないことを「仕方がない」なんて考えをする人は少なくなるのではないかなぁと思ったりします。