小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

100万回生きたねこ

久しぶりに絵本の紹介です。
最早紹介するまでもないほどの有名どころですが…「100万回生きたねこ」(佐野洋子 作・絵/講談社)は、今年の夏の時点で119刷発行、大ロングセラーの名作です。


ただ、私が子どもの頃から存在していたこの絵本、初めて読んだのは成人してからでした。絵本は昔から好きだったので、本屋さんへ行くと必ずと言ってよいほど絵本コーナーも覗いていましたが、なぜか大人になるまでこの作品を手に取ることはなかった。社会人になってから、あるとき、友人と本屋で待ちあわせをしていた際に、何気なく目についてぱらぱらとめくり……心の中で号泣したという思い出を持ちます(笑)。
「な、何じゃこの話は~!?こんな絵本があったなんて!」と、激しく動揺(?)し、後からやってきた友人にその感動を勢いよく伝えたところ、「むしろ今まで知らなかったの?凄く有名な絵本だよ」と驚かれたのでした。


ただ、今もって改めて読み返すと、これは仮に子どもの頃、目にしていたとしても、何事もなく素通りしたのでは…と、感じました。私が絵本というものを子どものものだけではないと感じるのはこういう作品に出会った時です。昔は何とも思わなかった話が大人になってから恐ろしく響く!というのは往々にあることではないでしょうか。無論、子どもさんでも響く子は響くでしょうし、大人になってから読んだところで「ふーん」で終わる人もいるでしょうが…。


しかし、深い(笑)。
100万回生きたねこは、自分のことは好きだけど、自分以外の者は「きらい」か「大きらい」。自分を大切にしてくれた数多くの飼い主たちに特別思い入れることもなく、淡々と生をまっとうする。生きては死に、死んでは転生し、もう何もかもがばからしくて「おっかしくて!」と嘲笑するねこ。全然おかしそうじゃないのに、いばってそう言うねこ。確かに100万回も死んでいたら世の中の酸いも甘いも知り尽くした感を覚えてもおかしくない。
けれど……という、終盤の展開が何とも愛おしい。自分以外の誰かに興味を向けられるようになって初めて、ねこは「生」というものを実感できたのかもしれないなぁ。


それにしても、これは子どもの時分に読んでいたら、一体どういう感想を抱いたのか!?と、過去の自分に聞いてみたいです。ちなみに、今月から「わたる」にも新装版を置くことにしたのですが、今のところ誰一人借りていません(爆)。ふ…まぁいい、そのうち誰か手に取るに違いない。そうしたら、感想を聞いてみよう。


イラスト自体チャーミングで、ぶさいくねこが単純に可愛いです。いや作中にもある通り、立派なトラネコなんですけどね。でもぶさいく。それが段々と…いや、これ以上は書かずにおきましょう。


ちなみに絵本って、話の内容がよく分からなくても、「絵を楽しむ」だけでも良いと思うんですよね。文字を追うことが苦手でも、ページをめくって何となく「こんな話かな?」と想像する。そして何度も目を通すうちに、段々とストーリーを理解する…そんな楽しみ方も素敵だなあと思います。


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