小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

「10」という通過点

小さな学習塾「わたる」では、通室が10回を突破すると、それまでお預かりしていた教材用のプリントや宿題、授業1回ごとの様子が記された記録シートを、すべて1冊のファイルに綴じてお渡ししています。


こんな感じです。


…写真を小さくするにはどうしたらいいのか(汗)。まだ画像貼り付けになれません。
でもこれじゃよく分からないので、ちょっと開いてみましょう。


結構厚いファイルなのですが、中身が多く、きちんと閉じることができません。


表紙はこんな感じです。


ファイルの厚さは個人によってかなり差があります。
授業の内容もさることながら、宿題の量で厚さはかなり変わりますね。
宿題量は生徒さん本人と話し合って決めているので、「毎日分、強制で出して欲しい」と言う子もいれば、「そんなに出さないで、死ぬ」「むしろ出さないで」と言う子もいますから(笑)。また、中高生にはいちいち毎日分と指定して出すことはめったにありません。


教材用プリントを授業後すぐにお返ししないのは、こちらで次回の授業や今後の学習目標を立てる際の参考資料として必要だからですが、これらは生徒さん逹のれっきとした「財産」なので必ずお返ししますし、保護者の方にも見てもらえたらと思っています(カードやおもちゃを使った学習などの場合、お渡しできないツールもありますが)。


宿題はその都度、まちがえたところを次回の授業で取り扱ったり、コメントしたりしていますが、ファイルにまとめて一括返却された際には、もう一度それらを見直してもらうと、新たな「ツッコミ」という名のコメントがついていたり、君はこういう問題が苦手だよね~とか、ここはもう一度解いてみよう!とかが加わっていたりします。


そして記録シートは、中・高校生には自ら読んでもらいたいと思って書いていますが、小学生の会員さんの場合は、どちらかというと保護者の方向けに書いています。いつも授業後10分の学習報告の時間を設けてはいますが、どうしてもそれだけだとお伝えしきれなかった部分が出てきますし、記録を10回通して読んで頂くことで新たに得られる「気づき」も多々あると考えていますので。


もちろん、親御さんがお子さんに読み聞かせてあげて、「あ~、確かにあの時の授業ではこんな話していたよね!」と一緒に振り返ってもらっても構わないのですが、何にしろ「わたる」で重視していることは「振り返り」なのです。


ただ1回授業受けて、これやった、分かった、終わり!とかではなくて。
当然、そういう積み重ねも大事ですけれど、授業を通して分かる自分の特性について考えて欲しいという想いが強いです。学習ってそのきっかけに過ぎないというか。
いろいろな形で勉強していると、子ども達の様々な面が見えてきます。


「自分は先生から、ただ言われるだけだと、聞き逃すことが多い」
「問題文を渡されてしまうと、そればかり見てしまって、先生の声が聞こえなくなる」
「絵と文字を一緒に組み合わせると、文章題の理解が進んだ」
「文章題、例え5~6行の長いものでも、こんな風にかんたんに書いてあると読めるぞ!」
などなど。
学習する中で多くのことを経験するので、それだけ分、自分について気づけることがあるはずなのです。


また「わたる」では、宿題などで取り組んだ「時間」をかなり重視していて、本人にも「宿題の際は、始めと終わりの時間を必ず見て記録すること」と言っています。
シートに本人が「5分でできた」と書いていても、実際こちらで同じ問題をやってみて、5分では終わらないことは多々あります。つまり適当に「5分くらいだろ」と書いているのがバレるわけですが(笑)、仮に時計を見ていなくても、その「〇分くらい」が当たっていれば無問題です。自分の作業に予想をつけられることは大切で、逆にその予想がかなり外れているとなると、普段の生活でも時間の見立てが甘く、時間感覚が乏しいということになります。ですから、そのような場合には、普段から時計を見る癖をつけ、自分の作業がどれくらいかかるかを気にして欲しいと思うのです。そうでなければ、例えば、出かける準備をするのに自分では「5分くらい」と思っていても、実際は10分以上もかかって、親御さんや周りをやきもきさせることになりかねません。


とはいえ、時間の感覚を身につけるって大人でも難しいです。それに、時計ばっかり見て、時間ばっかり気にする人生になる必要はないと個人的には思っています(笑)。
が!それでも。
普段からよくやる作業、日常生活において、自分の行動がどれくらいかかるかの大体は知ってもらいたいかな、と。身近な例だと、漢字10個書くのに自分が何分くらいかかるか分からないと、テストで時間見ながら解くこともできませんからね。


そんなこんなで、「わたる」で行った授業や、その後課された(主に)復習用の宿題の数々を見直してもらい、且つ、「わたる」からのコメントシート10回分を読んでもらうことで、自分の今の得意や不得意を知ってもらう。「もうとっくに知っているよ」と言う子も、改めて自覚し直してもらう。その為に、この10回突破ファイルは、生徒さんの宝物として、大事に取っておいてもらいたいなーと思っているのです。


「10」という数字に特にこだわりがあるわけではありませんが、5回じゃ少ないですし、逆に10より多い数で返却となると、隔週コースの生徒さんが振り返るにはかなり昔のことになってしまいますから(笑)。
あ!ただですね。記録って本当に不思議だなと思うんですけど、読み返すとその時のことって凄く思い出せるのですよ。結構昔でも。あー、こんな会話したなとか、あの時のあの子、あんな顔してたっけな!とか。
で、生徒さんと一緒にそれらを読み合わせすることも偶~にあるのですけど、そうすると生徒さんの方でも、「あった、この話、覚えてる!」となるんです。やっぱり記録って大事だなと思いますね。


……でもこの間、20回突破で2冊目のファイルを渡した子に、「前の10回ファイルも読み返した?」と訊いたら、「あ、読んでないわ(笑)」と返され……、「ピュ~」と、塾長ごんの心には寒風が吹き荒んだのでした。


ま、まぁ、大人になってから読み返してもいいさ。とりあえずなくさないでいてくれれば…(笑)。


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