小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

ADHD関連の本①

お昼休みにツイッターを覗いていたら、春日部駅のポスターが感動的という話題が流れてきました。
アニメ「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんが「かあちゃんの夏休みはいつなんだろう。」「かあちゃん、楽しい夏休みをありがとう。」「かあちゃんがもっと楽しくすごせたら夏休みはもっと楽しい」と言っている姿が描かれているポスターです。
むむむ…確かに。これを見てじーんとこみ上げるものがある世のお母さんは、一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、「そうだよ、かあちゃんには夏休みなんてないんだよ!」と、我慢して抑えていた怒りが再燃する可能性も…!?何をかくそう、私の知り合いの「かあちゃん」も「早く夏休み終わってくれ~しんど~」と言っておりまして…。でもそうやって愚痴りながらも、子どもたちをプールに連れて行ったり、自由研究のための博物館や科学館に付き添ったり、家族旅行したり…大変なサービス精神を発揮していましたよ。母の愛ですね。
関東では夏休みも終わって学校が始まり、ちょっとほっとされたお母様もいらっしゃるかと思います。夏休みだけでなく、いつも本当にお疲れ様です。


さて、本日のブログは本の紹介です。「ADHDの子どもたち」(岩坂英巳 編著/合同出版)を読みました。
恐らく、この手の支援教育本を何冊か読まれている方にとっては、そうだよね、そうだよねという「頷き(同意)」が主で、もしかすると新しい情報や知見に関しては、特にはないと思われる専門家さんもいらっしゃるかもしれません。
でも、この「そうだよね」という部分が、世間ではどれくらい知られているのかなぁ…というところも気にかかります。


例えば、ADHDと聞くと、
「多動でいつもごそごそしている、不注意で物をなくしてしまう、身勝手な行動ばかりするなど、多くの人がマイナスのイメージをもつ」
かもしれないけれど、実際に関わったことのある人からは、
「エネルギッシュである、ツボにはまると抜群の集中力を発揮する、とても優しく相手を気遣う」
などの魅力的な様子が語られることも珍しくない、という「事実」とか。


多動で衝動の高いお子さんを前にすると、どうしても「親のしつけが十分でない」と思われる方もいるかもしれないけれど、決してそうではない、という「事実」とか。
また、子どもたちも「わざと」「ふざけて」問題行動をしているわけではない、という「事実」とか。
それは「脳のいくつかの領域の機能(働き)に問題があったり、偏りがあるためにそのような行動をとってしまう」のであり、そのことは研究でも明らかになっている。それらは実際にADHDのお子さんと関わっているご家族や学校の先生、ご近所さんにとっては当たり前のことかもしれないけれど、ADHDを知らない、深く関わったことがない人にしてみたら、まだまだ浸透していない事実なのかもしれない、と感じることはあります。
脳の機能の問題といっても、ADHDだからこう!と一括りに言えるわけではない、というところも、広くたくさんの人に認知されない要因かもしれませんが…。


本著では、ADHDと言っても様々なタイプがあり、故に、困っていることも様々であると述べた上で、この脳の機能については、「ADHDの人に見られる主に3つの領域の機能不全」について紹介されていました。


1つめは、前頭前野を中心とした実行機能の障害。
実行機能というのは、たとえば将来達成したい目標があるとして、そのためにどのように計画立てして、実行して、それをどう効果的にやっていけるかを考えられる力のこと、とでもいいましょうか…。
2つめは、側坐核を中心とした報酬系の障害。
例えば、人はおいしいものを食べたり、人からほめられると嬉しい・心地よいなどの「快」感情がわきますよね。そうした(様々な欲求が満たされた時に脳内が活性化して起こる)「快」感覚を与える脳内ネットワークに何らかの障害があるということです。
3つめは、小脳や側頭葉を中心としたタイミングをとるなどの時間処理機能の障害。


ただ、ADHDの人にこの3つの機能障害が必ずあるわけではなくて、1つとか2つだけという場合も多いようです。
だからこそ、ADHDは「タイプも様々」で、子どもさんによって「困り感もそれぞれに違う」ということになります。つまり、ADHDという名称自体は少しずつ認知されてきたけれど、実際にこういう症状だからこう!対処策はこう!というところは十二分には出ていない。出し切れない部分がある。また、そうした機能的要因に加えて、生育環境も千差万別なため、子どもさんに関わる保護者、学校の先生等は、その子にあった対応をその都度考えていかなければならない、ということになるわけです。


でも、その中においてこういう書籍で、こういう特性のある子にはこのような対応策がありますよ…と、紹介してもらえるのはとてもありがたいですよね。千差万別と言っても、「その方法はうちの子にも合った!」「うまくいった!」というヘルプになる可能性は、紹介本の数ほど増すということですから。なので自分もこうした書籍は何かしらの機会に見つけては読み続けていきたいと思っています。自分だけの経験だけでは追いつかないことが本当に沢山ありますから…(だから「わたる」は「研究所」という副題もつけているんですけどね。一生勉強していかなくちゃという想いから)。


ところで、本著の後半はまさにその事例集となっているわけですが、ぜひ紹介して「続きも読んでみたい!」と思ってもらいたいので、今回は冒頭の紹介だけで長くなってしまったことですし、次回の記事に続けて書きたいと思います。


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