ふしぎ駄菓子屋 銭天堂
小さな学習塾「わたる」では、毎月「わたる通信」というのを配っています。そこでは、教室からのお知らせをはじめ、オススメの問題集やアナログゲーム・文房具、興味深い教育心理学研究の紹介などをしています。
その「通信」で「わたる文庫」(=教室に置いている、塾長が好きな本を集めた本棚)のことを載せることもあり、先日、親御さんへ「わたる文庫に入れたい本があったら教えて下さい」とリクエストを募ったところ、上記タイトルの本「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」(廣嶋玲子著・jyajya絵 偕成社)を紹介してもらいました。
恥ずかしながら最近本屋さんへ行く回数がめっきり減ってしまって、世間で人気の本などの情報に疎いもので、この「銭天堂」という作品がアニメになっていること、子どもが選ぶ好きな本の上位に入っていたことも何も知りませんでした。
これも会員の方に見せていただいた記事を読んで知ったのですが、近年は児童書がそうした子どもの選ぶ売れ筋作品のランキング10位以内に入ることはめったにないらしいです。「ざんねんないきもの辞典」に代表されるような変わり種の本は好んで読まれても、いわゆる「小説」を読む子どもさんは減っているのかもしれませんね(みんな今は動画が主流ですからねぇ…)。
その中での堂々上位入りとは!?ということで、早速読んでみましたら―…。
もう1話目を読んだだけで「好き!!」と思いました(早い・笑)。
いやー、面白い。率直に面白かった。これは人気出るの分かる!!
主人の紅子さんの外見もしゃべり方も味があって好きですけれど、物語そのものが好きでしたね。スリリングな駄菓子の数々がどれもユニークで、またそれらが、日常にちょっと困った悩みを持つ登場人物たちを驚かせたり戸惑わせたり助けたり。月並な感想ではありますが、「今すぐ駄菓子屋へ行きたい~~~」という気持ちにさせてくるのも凄かった。読みやすく、流れるようにページをめくれる文体も素晴らしいです。
ごん塾長は、ちょっと神経質なところがありまして、本来「見た目が毒々しいお菓子」って苦手なんです。紫とかショッキングピンクとか、アメリカのスーパーに売っていたりするジュースもそうですけれど、「何故にこんな原色なのだ…食べ(or飲み)たくないよ」と思ってしまう。昔、学校の家庭科の授業で、合成着色料の学習をした際に過度な怯えを持ったせいかもしれません(でも今は合成着色料という文言はないんでしたっけね)。
ですから、教室に置いている休憩用のおやつなんかも、ヘンにこだわりを持って、国産の安全品質◎なやつ(どんな)しか置かないから!とか言ったりして(笑)。この間生徒さんに「ねるね〇ねる〇、オイシイじゃん」と言われ、暗に教室にも置いたらどうかと勧められましたが、「いや、私がオイシイと思ったやつしか置かんから!」と突っぱねたり(何て面倒な塾長なのだ)。……しかし食べてもいないのに「美味しくない」と断じるのは間違っていると分かっているので、今度意を決して(?)食べてみて、美味しかったら教室に置くとその子には言いました。
おかしなところがあると言えば、塾長、本来人型、動物型のクッキーとかも嫌いでして。「銭天堂」に、泳ぎが苦手なことが悩みの少女が、マーメイドの型抜きグミを食べる話がありましたけれども、例え泳ぎが上手くなると言われても、人型グミなんて食べたくない…と思う派です。←
そんな塾長が、しかし銭天堂というお話が放つ魔力そのものには囚われて、次々と新しいお話を読み進めてしまったのですから驚きです。しかも、しまいには「駄菓子屋さんへ行きたい!」と思ったわけですから…。思えば、こんな風に細かいことを気にする人間になる前の、幼い頃の自分は、近所の食料品店の片隅にあった駄菓子コーナーが大好きでした。その中でも、まさに毒々しい色のチューイングガムがお気に入りで、小銭を握りしめては、しょっちゅうそのガムや、他にもいろいろなお菓子を買っていましたっけ…。
などなどと、そう、これは子どもさんが楽しむだけではなく、大人もノスタルジーな気分になれること請け合いの作品かもしれません。
そしてきっと、駄菓子屋さんへ行ったら、あれもこれもと買いたくなっちゃうのだろうな。今や近所に駄菓子屋さん、まったくなくなってしまいましたけれど…。
何にしても良い本を勧めてもらえて本当に嬉しかったです。続刊も仕入れねば!という勢いです。会員の生徒さん逹も借りてくれるといいなぁ。みんな、小説を読もうぜ。