小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

物の価値が分かること

段々と寒くなってきましたね。「わたる」では備え付けの暖房が効き過ぎて、どうしたものかと困っています。設定温度をかなり低くしてつけても相当な熱風で、一瞬のうちに教室内が「猛暑」状態に…。慌てて消すと、当然のことながら間もなくして寒くなります(笑)。う~ん、以前にも書いたことですが、ヒトによって体感温度も違うし、教室内を快適空間に維持することって思いのほか難しいです(この暖房はそれ以前の問題?)。


さて、今日のブログではお買い物の話でもしようかと…。
「買い物」をテーマにした授業、個人的に凄く好きです。いくらでも、それこそいろいろな課題に沿った授業が作れますし、便利テーマですよ。
以前、ある支援学級を見学させてもらった際にも、お買い物のロールプレイングゲームをしていて、学校でも定番なのかな~と思いました。先生が店員さんで、生徒はお客さん。お財布に入っている金額はあらかじめ決まっていて、その予算をオーバーしないように自分の好きなものを買いましょう、という内容でした。お店屋さん役の先生は、事前に美味しそうな食べ物の商品(おもちゃ)を準備されていて、それが布をかけた机に色とりどり並べられ、見た目からもう楽しいです。生徒さんもウキウキしながらお買い物を楽しんでいました。
支援級に限らず、こうしたお買い物のロールプレイングゲームを授業に取り入れる小学校は割とあるかもしれませんね。買い物をすることによって必然的に計算をすることになりますし、自分の持ち金額を超えないようにするには「いくらまで、何をどれだけ買えるのか?」等、じっくり思考する機会にもなります。


しかしお金の問題。楽しい反面、実はとても難しい課題だとも思います。
私たち大人は当たり前のように、「1円玉が5個で5円玉1つ」とか、「10円玉が10個で百円玉1つ」とか、「百円玉が10個で千円札1枚!」…などと考えることができますが、そもそも「お金」って、算数で習う数字とは別の生き物に見えませんか(笑)?


10のまとまりを表すタイルが10本あったら100!…というのは、具体物(学校では算数ブロック)があれば分かる子は多い…かもしれない。
しかし例えば、100円玉という硬貨が10個集まったら千円札という「紙1枚になる」…という変化は、お子さんの中でナゾ過ぎる!と感じる子がいてもおかしくないのではないでしょうか。ましてや、千円札、二千円札(幻の)、五千円札、一万円札…と、見た目は同じ「紙1枚」なのに、それによって価値が違う、それに応じて数も大きくなっていくとなると、数の概念がきちんと入っていないお子さんには、もう何が何だか??となっても不思議ではありません。


実際に、「百円のシュークリームを1つ買いましょう」という課題に、目の前の百円玉をそのまま出すことはできても、五十円玉を2つ出してもOKとか、十円玉を10個出しても買えるよ!…ということを理解するのが難しいお子さんとは、過去にもお会いしたことがあります。そう、お金って難しい(逆にお買い物は何なくできるけど、タイルの問題がさっぱりという子もいますけど)。


あとは、お金の払い方も結構難しいですよね。
例えば「143円のポテトチップスを買おう」と思ってお財布の中に1,200円あったとします。千円札1枚と百円玉2つ。私たちはそこから百円玉を2つ取り出して買えば良いとすぐさま思うかもしれませんが、143と200、どちらが大きいんだっけ?と迷ったり、そもそも対人緊張でお店の人にお金を払うことが結構なハードルでパニック!何だかよく分からないから、とりあえず大きいお札を出しちゃえ!など…。
そしておつりをジャラリともらってお財布がパンパンに…という話はあるあるです。これも以前担当していた生徒さんの話ですが、「とりあえず何でも万札出しておけば間違いはない!」って子がいまして…お金持ちだね…いやいや親御さん、大きいお金をそんな持たせないで~という問題もありましたっけ(笑)。


このように、お買い物一つとっても、数字との葛藤!店員さんとの葛藤!それから、物の価値に対する問題!等々、様々なことが学べるのです。


物の価値、というのはタイトルにもしたのですが、例えば、お子さんは当然のことながら働いてはいないので、欲しい物があったら親御さんにねだります。
みんなが持っているから、ニンテンドーswitch買って!タブレット買って!
…って、それ1台いくらするのよ?え~✕✕万円くらい?と、そこまでは普通の会話のように繰り広げられますが、その✕✕万円を稼ぐのに、お父さんやお母さんはどれくらい働いているのかとか。その✕✕万円があったら、一体いくつのチロルチョコが買えるのか、とか(笑)。そういう実感をもってお金について考えられるといいなぁと個人的には思うのです。お金に関しては、あまり生々しい話はしないというご家庭も勿論あるとは思いますが、高価なものや、生活上よく使う物の値段についての知識は、小さな頃から知っておいてきっと損はないはずです。


ゲーム機やタブレットは高価過ぎるので例としてふさわしくなかったかもしれませんが、例えば一緒にスーパーへ行って、お夕飯の買い物を一緒にするだけでも良いかもしれません。あら、あっちのスーパーでは大根147円だったのが、こっちの八百屋さんでは30円も安い!とか。そんな何気ない会話をするだけでも、へ~、野菜のお値段って大体これくらいなんだ?とか、え~、同じ商品でも、お店が違うだけでお値段がそんなに変わるんだ!?とか。そういう日常から、ごく一般的な金銭感覚を身につけていけると良いのかな、と思います。


かくいう私も、以前はそうしたことにまるで頓着なく、近場でお買い物を済ませてしまったり、欲望のままに、大して必要ではないものを衝動で買い込んでしまったりと…様々な失敗をしている身ではありますが…。
「見通しを持って買い物をする」というのは、それこそ生きていく上で大切なスキルなので、「わたる」でもそうした授業はなるべく積極的に取り入れていきたいなぁと考えています。


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