なぜ手を洗うのか
雨が続きますね。雨でも晴れでも曇りでも、相変わらず「わたる」の床磨きをせっせとしております。自分の家もこれくらいやるべきですよね、本当は…。埃が舞っていても全く気にならない。この違いは何なのか?外面を気にしているのか?(ある意味当たり前)
掃除だけでなく、周囲の備品を汚したくないし、指紋もつけたくないというレベルで気を遣っている(笑)ため、手洗いもやたらとしております。
そこで毎度思い出してしまうのが、新人時代に出会った女子生徒のことです。仮に「花ちゃん」としましょう。私が担任していたわけではないのですが、花ちゃんは人なつこくて、誰にでも話しかける明るい子でした。
それでその花ちゃんが、何のタイミングか忘れましたが、私が水道で手を洗っていると、スタスタと近づいてきて言うのです。
「ごんちゃん~。そんなんじゃ、全然ダメ!そんなのは手洗いと言わないよ!」
かなり呆れています。花ちゃんは天然キャラで通っているところがあり、授業中でも悪気なく話しすぎたり、課題に対して見当違いのことをしてみたり。普段、周りの先生や友だちから「何やってんだよ~」とか「そうじゃないだろ!」などと叱られたり、ツッコミを入れられることが多々ありました。
それに対して彼女は、「え~?えへへ」と笑ってごまかしり、「分かった、分かった、うっさいな~」くらいの返しはしますが、憎めないキャラというか、注意や指摘を受けてもいじけないのが良いところで、大体(笑)忠告も受け入れます。ですから、花ちゃんに対し好感度が高かった私は、「むしろみんな、花ちゃんに厳し過ぎじゃない?」「下手したらバカにしている感じになってない?」と心配に思うことすらありました。折角の花ちゃんの素直さを、周囲の多過ぎるダメ出しによって消されてしまうことが心配だったのです。
しかし、この時ダメ出しされたのは私です(笑)。
花ちゃんは、いつも自分がみんなから言われるように「そんなんじゃダメ」と私に対して口を尖らせます。
「何がダメなのよ。ちゃんと洗ってるじゃん、石けんもつけてるし…」
「石けんなんて、それ、むしろつけすぎ。そうじゃなくてさ~、洗い方!やってあげるからよく見てなよ?こうやって~、指の間も1本1本、ちゃんと洗うの」
まるで小さな子に教えるお母さん状態です。
花ちゃんは私の横に立ち、実際にどのようにして手を洗ったら良いか、ゆっくり丁寧に見せてくれました。むむむ…確かに、指の間1本1本なんて洗っていなかった…。しゃしゃっと手のひらを擦り合わせて、裏側に何となく石けん行き渡らせて「洗っている気になっていた」かも…。
しかしすぐ余計な一言を付け足す私は、
「でもさ~、普段、花ちゃんもそんな丁寧にやってるの?めんどくさくない?」
……あなたは、どこの子どもですか?という酷い返し。素直に「そうか、ありがとう!」と言えば良いものを……。
すると彼女は「はぁ?」と奇っ怪な生き物を見る目で私を見返した後、またまた呆れたように言うのです。
「こんなの何秒よ?というか、手は大切にしてあげなきゃ。物を食べたり、人と手をつないだり、汚くしていたらダメなところじゃん。だからごんちゃん、今度からはきちんと洗うんだよ?分かった?」
ぐうの音も出ないとはまさにこのことです。
以来、私は手を洗う時は必ず指の間1本1本も気をつけて洗うようになりました(笑)。
勿論、これまで「丁寧な手の洗い方」を知らなかったわけではありません。特に汚れた時は念入りに洗いますし、その際はそうした洗い方もしていたことでしょう。
ですが、急いでいる時、何の気なしに洗っている時は、ほとんど意識していなかった。何をって、「丁寧に洗う」こともですが、「手を大切にしよう」なんて言うことを。
おかしな話ですが、「手なんて」あって当たり前というか、自分が使えていて当たり前というか…。世の中にはそうできない人だって確かにいるし、当たり前なんかでは決してないのに。年を取れば身体機能も衰えるし、そうなれば自由に動かせていて当たり前だったものも当たり前ではなくなる。もっと自分の身体に感謝したり労るべきなのに、「そんなこと」を意識する機会は、というか、気持ちすら自分は持っていなかったわけです。
花ちゃんの言い方はつっけんどんで説教じみた感じであったものの、とても優しい言葉に溢れていました。「手は大切にしてあげなきゃ」と言うのは勿論、「物を食べたり、人と手をつないだり」って例えがとても素敵だった。だから物忘れの激しい私でも(笑)ずーっと覚えているわけですが、彼女がこれを親御さんから教わったのか、或いは自分自身でそう思うようになって発した言葉なのか。それは分かりませんが、私の中にすーっと入ってきて、「自分もこれからそうしよう」と思えたのは、実際に「お手本を見せてくれた」ことと併せて、丁寧に手を洗うべきその理由に「説得力があった」からです。
そしてイヤミがなかった(笑)。「自分だって人からのアドバイスを聴かないくせに、偉そうに!」といった感情が全くなかった。恐らくは、彼女がいつも自分にダメ出ししてくるみんなへの返し(=ちょっとした反撃はするけれど、基本的には受け入れ、頷く姿勢)を見て知っていたから、「ダメ出しもよくされるけど、人から言われたことを無碍にしない子」という印象が強く、そんな子が言ってきたことだから聴こうという気持ちもあったと思います。……いや、今のはとってつけた理由か(笑)?でも、いつも口うるさい子から言われたり、イヤミな言われ方をされたりしたら、それがいくら正しいことでも、聞き入れたくない!という反抗心がわくことはあると思うのです。少なくとも、その時の私にそんな感情が全然なかったのは事実です。←めんどくさくない?とか言い返している時点であれでしたが…
指の間1本1本を洗う時、本当によく花ちゃんを思い出します。
そして、何かを伝えたい、教えたいと言う時に、彼女のように相手に「そうか~」って納得してもらい、実践してもらえるようなキャラクターになれたら良いのに…としみじみ思うのです。
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