授業づくりは大変だけど
昨日に引き続き、今日も本の紹介をひとつ。
麻柄啓一先生の「子どものつまずきと授業づくり」(岩波書店)は面白くて何回読んでも新鮮というか、授業づくりのためのインスピレーションがわきます。ぜひ現場の先生方にも目を通していただきたい読み物です。
「授業本」って、一見すると退屈なものが多いのですよ…こんなことを言ったら悪いなぁ~と思うのですが…「この本がすでにつまらないのに、面白い授業づくりをしろって、壮大なブラックジョークじゃん!!」…と、教わる身のくせに逆ギレしたくなるような…そんな本も少なくないと思うわけです(※私見です)。
しかしこの本は違います。小説のようにさくさく読める。実際、物語形式でこの本は進みます。架空のキャラクター・新米教師の林先生が、初めて担任した5年生のクラスで「少数の入った割り算」を教えようとするのですが、そこで初めて「分かるように教えること」の難しさにぶち当たり、悶々とする…。
割りきれる割り算(6÷2のような式となる文)の時は特に問題なかったようなのに、少数という中途半端な数字が出てきた途端、子どもたちの歯切れが悪い…。気だるい空気が流れる。ざわざわする教室。林先生はどうして子どもたちが理解してくれないのか分からない。
で、とりあえずいつも出来る「賢い子」を当てて、その子に正解を言わせ、「これはそういうもんなの、分かった!?はい、口に出して言ってみよう!」とか何とか、「バシッ!」と教えることで突き進もうとするのだけれど、自分でその授業の「玉砕具合」には気づいている。
実際テストでも、いわゆる単純計算は解き方を「こういうもんなの!」と言ってやったからある程度みんな出来ているけど、文章題はからっきし。「こんなに出来ない子がいるの!?」と愕然とする林先生。
これだけでもう「面白そうな本だな!?」ってなりませんか、世の先生方!
別に麻柄先生の知り合いでも何でもないし、この本を押し売りしようというわけでもないのですが。自分自身、「子どもに分かる授業をするには」という永遠のテーマにはしょっちゅう苦しめられているため、この架空の新米先生と一緒に、問題解決へ向け、「わかる授業づくりを考える」本著には、共感と好感を覚えまくるのです。
……ぶっちゃけ、世の中には、自分の授業の玉砕具合に気づかない先生も少なからずいらっしゃいますよね。よくそんなつまらない授業を50分もやれるね?みたいな…。自分でも喋っていてつまらなそうだし、いっそ不機嫌だし、何のためにそこにいるの?みたいな…。私自身、そんな大層な授業ができるわけじゃないですけど、少なくとも教えることに退屈を感じたことはないです。生徒に「分かりづらい」と文句を言われたら改善できるようやり方を変えるし、特に言われなくても、自分の教え方には常に目を向け、客観的でありたいと思う。それって教える仕事を続けるからには、ずっとやるべき当然のことではないのかなぁと…。
だから、新米にして自分の授業がボロボロだってことに気づいて悩む、この林先生の奮闘ぶりに好感を抱くのです。
林先生は先輩の学年主任や、ベテランの授業づくりが上手い先生にも割り算のことを相談するのですが、どうもピンとくる回答が寄せられない。
で、そんな時、大学時代に履修していた教職課程を担当していた先生の言葉がふと過ぎる。
「自分がわかっていることと、それを教えることができることとは違う」
この言葉をくれた先生と偶然再会することで、林先生は、自分で当たり前に分かっているつもりだった割り算を、本当のところで理解していなかったんじゃないか、そもそも割り算ってかけ算が分からないとうまくいかない、じゃあかけ算を子どもたちはきちんと理解しているのか?…等々の気づきから、では如何にクラスの子どもたちに分かってもらえるかを考え、工夫した授業づくりを実践し始めるのです。
この本では「少数の割り算」と「速さ」という二大テーマで話が進むのですが、どちらも授業運びの様子が物語形式で描かれるせいか、実際に授業見学している気になるし、本当に教室でこういうドラマって起きるかも!と想像できて、自分でも試してみたい!となります。そもそも算数に限らず、「教え方について」のヒントもたくさんありますし。
また、本編とは別(?)に、林先生が、この恩師の開く勉強会に参加してくる若い女性教諭に仄かな恋心を抱いて、だからこそ余計にこの勉強会に熱心に参加するって下りがついているのも微笑ましいのです(笑)。いやー、先生だってそういう動機がないと貴重な休日を返上して勉強するのは大変だよ…という想いが、きっとこの作者先生にあるんだ…と理解(勘ぐり過ぎ?)。
実際、先生方っていくら楽しい授業をやりたいと思っても、その準備をする時間が圧倒的に足りないのは周知の事実ですよね…。さっきはきついことをちらりと書きましたが、先生だって、好き好んで教科書の棒読みして、ポイントを黒板に写してハイ終わりってやっているわけじゃない!と思うのですよ…。私、そうした授業を延々と続ける先生の目の前で、遂に睡魔に負けて気絶した際、その先生からめちゃ硬のバインダーで思いっきり頭をぶっ叩かれた恨みを未だに引きずっていますけども。←
ちなみに、私自身が教師になってから生徒によくされたダメだしは「雑談が多い=さっさと核心に行け」ですね(汗)。あれもこれもと余談を挟んでいるうちに時間がなくなり、「あー!また進んでない!」と怒られる。計画性ゼロです…どこが客観的なのだ…。
また、「ごんは難しい言葉を使い過ぎてて、何を言っているか分からない時がある」と言われたことで、「そうか!すまん!」となり、次の授業へ臨んだ際、いちいち言葉の説明をしていたら、「そんなことくらい知っているし。俺らをバカにしてんのか!?」と怒られて、「どないやねん!」となったこともあります(笑)。何事もバランスが肝心なわけですが、その調整がなかなかに難しい…。
昨日と同じ結論になるわけですが、つまりは毎日が要修行です。