ころべばいいのに
大好きな絵本の紹介!
「わたる文庫」で増える確率が間違いなく高いのは絵本!じわりじわりと増えております。4月には新しい本棚、買えるかな?
本日ご紹介するのは、ヨシタケシンスケさん作「ころべばいいのに」(ブロンズ社)。
これはですね。子どもさんをお迎えに来る時、少し待ち時間ができてしまう保護者の皆様にも、是非お手にとって読んでもらいたい作品です。恐らく1ページ開いたらもう最後まで読まずにはいられなくなり、読み終わった時には「うちの子にも読ませたい!」となること請け合いです。
誰もがぶつかる難問、「イライラしたとき」、「どうしようもなく気持ちが落ち込んだとき」、私は・ぼくは、どうしたらいいの?
「嫌いな人が現れたとき」、「誰かにイヤなことをされたとき」、このモヤモヤした心をどう整理すればいいの?
そんな疑問に、別に明確な答えはくれませんが、主人公である少女の「わたし」が、学校の帰り道に、悶々と?淡々と?切々と?対処策を考えては、あーでもない、こーでもないと心の中で呟いてくれます。
その想いに、「うん、うん、そうだよね」と思ったり、「それ面白いじゃん!」と称賛したくなったり。一緒になって考えることができるのが素敵なのです。
何より、この絵本。本当に笑ってしまいます。特に「わたし」の物を考えている時の表情が抜群!
口を真一文字に結び、目線はやや遠くへ向けられながら、表情筋はぴくりとも動く気配がありません。「きらいなひと」が何人かいる「わたし」は、彼らがみんな石につまずいてころべばいいのにと思うし、そういう風にだれかを憎んでいる私の「じかんが もったいない!」とより一層眉間にしわを寄せたり。子どもなのに、いや子どもだから?何ともこまっしゃくれた感じが、キュートで、魅力的で、彼女を見守っているだけでニコニコしてしまいます。
ページをめくった時の「フェイント」も秀逸です。主人公の「わたし」は嫌な気持ちを振り払うため、そうなった時どうするかのアイディアをいろいろ練るわけですが、次のページを開くと……と、なっていたり(ネタバレ回避)。
散々考えて、これじゃない!?ってなっても、上がったり下がったりなジェットコースタースタイルが楽しいです。それにこの作品は、本当に様々な人が読むことを想定して描かれているのでは…と、ページをめくる度にその「思いやり」に温かい気持ちになります。みんながきっといろいろな想いで読むと分かっているからこそ、この絵本では「答え」をひとつに限定しないし、そもそもそんな対処策なんてあってないようなものだし、ね?と。ちょっとずつ声かけしながら、でもまぁ、どうにかこうにか、こんな風にやり過ごしながら、とりあえずやっていこうか?と。ゆる~く、でも、最後には何だか前が拓けたような、そんな心持ちで本を閉じることができます。
自分の気持ちをコントロールするのがなかなか難しく、でも自分ひとりで「どうしたらいいか考えるのが苦手」なお子さんに読んで欲しい絵本です。
そしてできればご家族と一緒に、この本の「わたし」のように、あーでもない、こーでもないとアイディアを出し合いながら読んでもらえたらなと。
本の帯に7歳の男の子が「ぼくのはげましの本です」と寄せた言葉が載っているのですが、うん、確かにこれは。ただ笑ってほっこりするだけじゃない、元気をくれる本だし、応援ブックにもなるかもしれないなぁと思います。
大げさではなく、一家に一冊あっても良いのでは!?そんな風に思わせてくれる作品ですね。
小さな学習塾「わたる」では、「わたる文庫」に置いてある本や絵本等を計30冊借りると、塾長から「今のあたなに読んでもらいたい本」を1冊プレゼントしています。
1回につき2冊までしか借りられないので、なかなか30冊読破の道のりは厳しいですが、少しでも「大人になっても大好きな本」と出会えるお手伝いができたら嬉しいなと思っています。