もりたろうさんのじどうしゃ
初版は1969年。今から50年以上前に出版された絵本です。
「もりたろうさんのじどうしゃ」(文おおいし まこと/絵きただ たくし/ポプラ社)は、今なお語り継がれる、大ロングセラーの名作絵本。
絵本の裏表紙には「3才~7才向け」と書いてあります。対象年齢を記している絵本(児童書)って結構ありますよね。……でも…うーん。
確かに、こういう表示があると、親御さんが「我が子に合う本を…」と探す際の参考になるとは思うのですが、逆に小学3年生以上のお子さんが、例えば本屋さんや図書館でこれを見たとき、「自分はもうそんな小さくないから、自分が読む本じゃないな!」となったら……、それは「非常にもったいないなぁ~~~」と思ってしまいます(まぁ「わたる」でも、「絵本」ってだけで手に取らない子がほとんどなんですけどね…)。
このブログで絵本を紹介する時、毎回「大人の方にも読んで欲しい!むしろ全人類に読んで欲しい!」というようなことを書いているのですが、この絵本もその例に漏れずなのです。
対象年齢なんて関係ないッ!すべての子どもに、大人の方に、一度は手に取って読んでもらいたい名著~!!…と激しく主張したくなる作品なのです。
すでに3才~7才の枠から大きく外れた大人のごん塾長が今開いて見ても、わくわく、にこにこ、心から楽しめる絵本です。
物語は、郵便配達員として毎日せっせと働く「もりたろうさん」が、雨の日も雪の日も、歩いていくつもの山を越え、人々に手紙を配る様子から始まります。
で、「あ~歩くのは大変だ。車があったら便利なのになぁ」と嘆いています。
それでも定年まで徒歩で手紙を配りきったもりたろうさん!!
なんと!
お仕事を引退した後(60才)になって!
「よし、運転免許を取るぞ!」と決意するのです。
…高齢者の免許返納が取り沙汰される現代社会において、時代に逆行しているのでは?と思われる方もいるかもしれませんが…。物語の中で奥さんも、「そんな歳になって免許なんて!危ないわ!やめて!」と心配しています…。
でも、もりたろうさんは努力と根性で運転免許をゲット。
ところがいざ、「さあ、いよいよ車を買うぞ!」と張り切ってお店へ行っても、く、車が高い!こんなにするの!?中古車売り場へ行っても、どれも高過ぎてとても買えない!
…と、サイフの中身を見ながら寂しそうにしょんぼりするもりたろうさん…。
どうですか?
もうこれだけでこの絵本、読みたくないですか(笑)?
というか、このシビアな内容で3~7才向け。そうか、この年齢からすでに「車を買うってとても大変なことだし、定年まで真面目に働いても新車を買えない人がいるんだ…」という社会の厳しい現実を知らしめようという意図があるのか!
…というわけでは決してないですので(当たり前)、安心して読み進めてもらいたいのですが。
この絵本の見所は、「自分の車を心から愛し、大切にするもりたろうさん」の姿を見ることと、大事にされまくったその車が、みるみるピカピカと素敵な変身を遂げていくのが分かる素晴らしい「絵」を堪能することかなと思います。車の部品とかも細かく描かれていて、それを見るのも楽しいです。車好きのお子さんは喜んで見入るかも。
もりたろうさんは、中古車センターの片隅でうち捨てられたかのように置かれていたオンボロ自動車を1万円で購入するのですけど、その車との旅(?)がこれまた素敵なんです。可愛い犬も出てきますし。事件もありますし。
話も面白い、絵も魅力的、良いこと尽くしで言うことなし!という感じです。
そして真面目に生きてきた優しいもりたろうさんにだからこそ起きた奇跡…みたいな。きっとあの吉兆はあの車が招き入れてくれたことなんだよ…とひとり勝手にしみじみしたり(ネタバレになる為、詳細は控えます)。
「わたる」に置いてあるこの絵本、何せ私が子どもの頃に何度も繰り返し読んでいたものなので、どんなに手入れをしても汚れております(汗)。だからみんな手に取らないのかしら…。でもちゃんと清潔には保っているんだけど…読んでくれ~~~。
仕方ない、このまま貸し出す人が出なかったら、観念して(?)新しいのを購入するか…と思っているくらい、絶対本棚に1冊は必須の名作です。
何か素敵な絵本を読みたいな~と探されている方は、ぜひ!迷いもなくこれをお奨めしますので、ご一読を^^。