小さな学習塾「わたる」~子ども達の自立と向き合う~

ADHDやLD、自閉症スペクトラム、アスペルガー等、生来より何らかの学びづらさを持つ子ども達の学習・生活支援を行う小さな学び舎「わたる」。その塾を経営するきつねが日々のことをぽつぽつ呟くブログです。

「じっくり」の経験を

昨年の開所時と比べると、明らかに…明らかにブログ更新率が落ちております。読みに来て下さっている方には申し訳ありません。ありがたいことに段々と忙しくなり、ブログを更新する時間がなかなか取れなくなってきました。


言い訳はやめいっ!ということで、本日のテーマへ移ります。またまた先日、とっても良い話を聞きました。そのことをこちらでもご紹介しようかと思います。
ある大学院生さんが、以前の指導教官である先生からしていただいた、「土地と建物」に関するお話を想起されていて、それがとても素敵だなぁと。


どういうお話かと言うと、「子どもの頃にぼうっとしたり、遊んだり、親御さんに優しくしてもらうことは土地を拡げることに似ている。一方で、勉強などして知識を積み重ねることは建物をたてることに似ている。つまり建物は(勉強すればするほど)高くすることができるけれど、元の土地が拡がっていないと、他の建物を建てられなくなる」と…。正確にはちょっと違ったかもしれませんが、こういった主旨の内容でして、「むむむ、なるほど~!」と唸ってしまいました。


長く教育現場にいると「土地を拡げること」の大切さを実感することは多々あります。
どんなにたくさんの知識があっても、頭でっかち…といったら言葉は悪いですけれど、若干偏っていないかい、それは(汗)?もうちょっとこちらの角度からも考えてみようよ?となって、そっと働きかけてみても、いや、これが正しい!こうじゃなきゃおかしい!…と、意固地に踏ん張って、その場から動かない子、動けない子…を割と見かけます。とても良いものをたくさん持っている生徒さんでも、何となくいつも余裕がなかったり、何故にそこまで急ぐ?と感じてしまったり、あぁ「落ち着いて周りを見渡す」ことが苦手なのかなと思ったり。折角良いものを持っていても、それだと周囲が引いてしまうこともあるので、何とも勿体ないのではなかろうか、となることが結構あったのです(大きなお世話なパターンもありつつ・笑)。
でもそういう生徒さんは、ぼうっとすることや、人とコミュニケーションとるのが苦手なのかな、と感じることが多かったのです。


それは今で言う「特性」というものも関係しているのかもしれませんが、一方で「そういう経験」が少ないまま成長してきたからでは?と感じることもあります。つまり、たくさんの人の話や意見を聴く機会、自分の考えを吟味し「揉む」経験、多方面からの情報を淀みなく受ける習慣、などです。これって、この情報化社会になってからの何十年かで、格段に変わってきたことのひとつなのではないかと思っています。


今って、そんなにぼーっとする暇なんてないですよね。別に子どもさんに限らず、電車の中などで外の景色を眺めている人、読書している人って少なくないですか(朝はぎゅうぎゅうラッシュだからそんなことできないという場合もありますが)。やっぱり手元のスマホを見ている人が圧倒的に多いし、しかもその情報も次々と流れていくから、みんなそれを追うのに必死。じっくり考える暇なんてないかもしれない。


子ども達が大好きな動画や無料アプリのゲームだって、日々更新されていくわけで、毎日見ないと追いつかない、みんなとの会話に乗り遅れる!
本音としては、昔の子ども達が「週に1回、〇曜日の✕時に始まる△アニメ」を楽しみに待っていたように、1週間に1度など、決められた日、決められた時間にやってもらった方が良いと思うのに、今っていつでもどこでも、最新の動く画像が見られるわけです(便利ですけどね)。


これだと動画が悪い!と批判しているみたいになっちゃいますけど、私は「じっくり待つ」とか、「余韻を楽しむ」時間って、もっと持った方が、よりその「楽しい!」と思えるものを堪能できると思うのです。次から次へと入ってくるものをただ流し見ていくだけでなく、一つのものを長く吟味して(味わって)、それからまた次…と行けるような、そんなペースが必要と言うのでしょうか。ちょっと立ち止まって考える時間が、もっと大切にされたら良いのになと思うのです。
その楽しいと思える建物だけどんどん高くしても、下がぐらぐらして怖くならないかなと余計な心配をしてしまう。


土地をならさないうちに建物(知識)だけどんどん増やしても、何かが違う気がする…という話がしたかったのですが、うまく表現できません。
それと、親御さんが子ども達に優しくしてあげたりして、その子の人間性とでも言うべき基礎の部分(土地)を拡げてあげるというのは、それはその通りだと思うのですけど、それだけじゃないと言いますか、周りにいる私たち大人、学校や地域という社会環境も、子ども達の土地形成には必要ですよね。子ども達はそういう大勢の大人に見守られながら、安心してぼーっとしたり、独り遊びからいろいろなことを学んだり、時には誰かと遊んだり…それら全部が揃って初めて、広い土地に多種多様な素敵な建物を増やしていくことができるのではないかな?と思います。あ、当たり前のことかぁ。


もちろん、「わたる」は勉強を教えるところ、知識を積み重ねる方に注力する組織ではありますけれども、ただ建物を高くするだけではなくて、ちょっとその建物から隣の建物を見る余裕があるくらいの…そういう人間形成のお手伝いもできたらいいなぁと、そんなことを思う今日この頃です。


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